要領の悪い長男をつい叱ってしまう
子供に笑顔や愛を育む ~小川健次の子育てセミナー⑤
子供に笑顔や愛を育む ・・・苫小牧民報/千歳民報 2015年8月6日(木)掲載
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「心の栄養」十二分に与える
今から約80年前、アメリカでろうあ者の母親が女の赤ちゃん・イザベル(仮名)を出産しました。家族は世間体を繕ってこの母子を地下の暗室に監禁したのです。脱出に成功するまで、実に6年半の歳月が流れました。
救出された時、イザベルの行動は生後6カ月の赤ちゃん並みで、言葉を話せず、心理検査では3歳児程度と診断。医師によって教育が行われ、数カ月後、簡単な話ができるようになりました。2年後には普通に会話ができ、正常な知的レベルに達しました。
子供に笑顔や愛を育む
6年半もの長い期間、話す相手がいない真っ暗な部屋で育ったイザベルが、人間社会に適応できた要因は何でしょうか?
母親はいつもイザベルを肌身離さずにしっかりと抱き締めて、育てていたのです。恐らく、心の中で愛を育む言葉をイザベルに語り掛けていたと思われます。これらの行為が赤ちゃんの心や頭に刺激を与え、人としての心や能力を育てていたのではないでしょうか?
ある日、男子高校生のお母さんが相談に見えられました。「息子は私に抱っこしてほしいとか、一緒に寝ようと要求してくるので困っています」と。聞くと、その子を出産してすぐ働きに出て、おばあちゃんに任せっきりだったとのこと。
「お子さんに幼いときから与えてこなかった愛情を、今からでも与えてあげることです」とアドバイスしました。「でも、ずうたいばかり大きくて、とても抱っこなんかできません!」「だったら、『お前も大きくなったね~。お母さんをおんぶしてごらん』と言って、お子さんに背負わせるのですよ。要は、息子さんはお母さんとのスキンシップを求めているのですから」「分かりました」
子育ての基本は、規範を身に付けさせる前に“共感の愛”を与えて、母子の信頼関係を築くことです。“共感の愛”とは、抱っこやおんぶ、添い寝などに加えて、笑顔や愛を育む「お母さんは、あなたが大好きよ」「あなたは、お母さんの宝物よ」などの言葉です。
小川健次(おがわ・けんじ)
1952年、常呂郡留辺蘂(るべしべ)町(現北見市)生まれ。68年から22年間、苫小牧に在住し、製紙機械の組み立て・修理や電気工事などに従事した。現在、神奈川県相模原市に本部を置く公益社団法人スコーレ家庭教育振興協会の理事・教育開発局長。生涯学習プログラムの開発、講師、カウンセラーなどを務める。子どもは社会人の一男(31歳)、二女(29歳と26歳)。