若夫婦に店を譲ったが
別れた息子に気持ちを伝えたい
【お悩み】:私は四十二歳の主婦です。四十六歳の会社員の夫とは再婚で、夫との間に小学五年の娘がおります。
最初の結婚は夫の両親との同居からスタートしました。私の両親は私が物心つく頃に離婚したので、家庭のぬくもりを感じる結婚生活に幸せを感じていました。
しかし、長男が生まれた頃からきしみ始め、針のむしろのような毎日に耐えきれず、離婚の決心をしました。その際子どもは渡さないと言われ、悩んだ末、子どもを置いて家を出ました。
もう結婚はこりごりと思っておりましたが、やさしい現在の夫に出会い、再婚しました。夫にとっては初めての結婚です。
先日知人から、長男が東京の大学に入学したことを聞きました。今更とは思いつつ、せめて一度でも会いたい、入学祝いくらいしてあげたいという思いに心が揺れています。娘には、兄がいることを話していません。以前、長男のことが気になって別れた夫に手紙を出したことがありましたが、戻されてきました。
理性ではわかっているつもりですが、「気持ちだけでも伝えられたら」と思うのは間違っているのでしょうか。
【アドバイス】:感謝の気持ちで今の家庭を大切に
「理性ではわかっている」というあなたの母としての思いと切なさは、同性としてとてもよくわかります。とはいえ、今静かな水面に石を投げ、波紋を広げるのは賢明とはいえません。あなたは決心して婚家を後にし、努力して現在の幸せを手に入れたのでしょう。せっかく築いてきた幸せを、感情に負けて壊してはいけません。
婚家を出た時、すでにそれぞれが別の道を歩み始めたのです。かつて出した手紙が戻されたということから考えてみても、そっとしておいてほしいという先方の思いが伝わってきます。
そもそも第一番に考えなければならないのは、息子さんの幸せです。おばあちゃん、新しいお母さんに育てられ、いろいろな思いで人生を歩んできた息子さんの成長を、心の中でそっと祝福してあげることも愛なのです。
今のあなたには、支えてくれるご主人やかわいい娘さんがいるではありませんか。あなたの成すべきことは、努力して築いてこられた現在のご家庭を大切にすることです。そして、家族にとって安らぎのある居場所を作ることです。家族にとって家庭は、“活力の再生の場”なのです。
息子さんをここまで育ててくれた方々、やさしいご主人、健康な娘さんへの感謝を忘れない生活を心がける時、娘さんにはお兄さんがいることを自然に伝えられる日がくるでしょう。また、息子さんが社会人になった時に状況が変わることも考えられます。
あなた自身は今を大切に、子どもたちにとって、ひとりの人間として恥ずかしくない生き方を心がけ、自己を成長させる学習に取り組むことをお勧めします。人生の主役は自分自身なのですから。
【月刊「すこ~れ」 309号 〔すこ~れ相談室〕より】