親の顔色をうかがう娘
優雅な暮らしも今は見る影もなく
【お悩み】:現在2人の子どもも独立し、67歳の私と70歳の夫の二人暮らしをしております。
夫はかつて10人ほどの人を使ってカメラ部品の会社を経営していました。
ところが、時代の波を受けて、親会社が人件費の安いアジアに仕事の大半を回すようになったのです。仕事は激減し、現在では夫が1人で細々と仕事をしております。
残念なことに夫の読みが浅く、仕事が激減する以前、家を担保に新しい機械を購入してしまっていたのです。
結局、資金繰りがうまくいかず、やっと手に入れた思い入れのある家を手放し、賃貸のマンション暮らしをしています。夫は、食べていくために、小さな作業場を借りて、わずかな仕事をしています。
新しい機械の購入を反対した私の意見に耳を貸さなかった夫に対して、いまでも腹が立って仕方がありません。
姉妹が皆、一戸建ての家に住んでいるというのに、私だけがなぜこんな思いをするのかと思うと情けなくなります。
最近腰痛を訴える夫にも優しくできない私です。
そんな折も折、3人子どものいる娘のところで別れ話が出て、離婚に向けて話が進んでいます。
私はかつて、周りからもうらやましがられる生活をしていた日々もあったのにと思うと、やりきれない思いでいっぱいです。
世間ではリタイアしたあとは、夫婦で優雅に海外旅行などといいますが、私には無縁な話です。
自分の気持ちを持てあましています。
【アドバイス】: 今あるものに感謝する心に転換を
かつて豊かな生活をしていた日々があっただけに、無念の思いをされているお気持ちはよくわかります。
幸せの形は一人ひとり皆違います。
家があれば幸せ、お金さえあれば幸せ、家族皆が仲良く健康であれば幸せ……。一人ひとり幸せの中身は違うので、それを「幸せ感」といいます。
どんなに豪華な家に住んでいようと、その屋根の下でどのような問題を抱えて悩んでいるかなど、他人にはわかりません。健康が取り戻せるのなら、何もいらないと思っている人もいます。
さまざまなことに出会いながら私たちは生きています。それが生きるということではないでしょうか。
今ないものに不足を思うのではなく、今あるものに感謝する視点に切り替えることが幸せを手に入れる鍵です。
家を購入したものの、ローンの支払いがきつく、持ちこたえられないで手放す人もいます。
現在は、あえて借家暮らしを選択する人もいる時代です。発想の転換をしてみることも、今の あなたには必要だと感じます。
かつては豊かな生活ができたのも、ご主人が律儀に仕事をされたからではないですか。縁あって結婚されたご夫婦、その年齢で一生懸命働いているご主人を支えるのは、妻であるあなたです。
どんなことがあっても、支えあっている両親の姿を見せることが娘さんへの最高のプレゼントなのではないでしょうか。
ささやかな喜びに感謝できる、自分作りの学習をすることをお勧めします。
人生の主役は自分自身です。
【月刊「すこ~れ」 299号 〔すこ~れ相談室〕より】