一人暮らしに半年で挫折した長男
認知症の両親が同居を訴える
【お悩み】:私の家族は夫婦と高校2年生、中学3年生の2人の女児、舅・姑との6人です。
夫と結婚して18年になりますが、夫の両親とは最初から同居していました。
次女は虚弱体質で、何とか義務教育を終えるまでにこぎつけましたが、誕生してこの方、
気の休まるときがありませんでした。
夫は、私が娘のことが心配で不安を訴えたりしても、一向に相談にのろうとはしてくれず、随分ともどかしい思いをしたものです。
一方、80歳になる姑に、3年ほど前から物忘れの症状がみられるようになりました。
一人で外出すると家への帰り道が分からなくなり、近所の見知らぬ家に上がり込んでいたり、
警察に保護されたこともありました。
そこで思い切って両親には施設に入居してもらい、1年が経ちました。
しかし私が訪問する度に「家に帰りたい」と訴えます。
今では82歳の舅にも軽い認知症の症状が出ています。
この度、一週間という期限つきで、両親を家に連れて帰ったのですが、期日が過ぎても、どうしても帰りたくない、と言い張ります。
強いて施設に帰そうという気持ちもないようです。
夫が親孝行な人であることは認めるのですが、この状態がずっと続くのであれば、私のほうが倒れそうです。
今では夫婦の絆も切れたように思えて打ちひしがれています。
長女も、そんな父親を信頼していませんが、私にも冷ややかな態度を見せます。
よきアドバイスをお願いします。
【アドバイス】:避けられない苦労なら向き合う
痴呆症状のあるご両親が、家に帰ることを望まれる心情は、いたわしく思えます。
御主人に相談しても回答が得られず、お子さんからも冷たい態度をされ、もはや極限状態まで追い詰められたあなたのお気持ちはよく分かります。
しかし、人生、何事も苦しみから避けようとするかぎり、一層ひどい苦労を背負うことになるものです。
避けられない苦労には、腹を決めて向き合うと、意外に道は開けていくものです。
結婚後、ご両親と18年間も同居されたあなたは、大変な苦労をされたことでしょう。
ご両親もご主人も、心の中ではどれほどあなたに感謝されていることでしょうか。
ご両親が年老いて、自分のことが自分でできなくなった今、施設へ入居したことは、一つの解決策であるかも知れません。
しかし、ご両親を人生の先輩として敬い、その気になってお世話を尽くすなら、いつかはご主人の心にも通じていくのではないでしょうか。
自分の親を子どもの前で悪しざまに言う態度は、子どもの心に母親を含めて大人に対する不信感を育みます。
親を大切に思っているご主人の気持ちを察してあげることはできないでしょうか。
失礼ながら、ご両親は沈み行く西日であり、あなたは昇る太陽なのですから。
【月刊「すこ~れ」 241号 〔すこ~れ相談室〕より】